中学生になってから、授業の内容は一気に難しくなりました。
英語では、日本語とは違う文章の順番に混乱し、リスニングでは問題の解き方自体が分からないこともありました。
数学では、証明や図形、関数などにつまずき、理科の計算問題や元素記号も、なかなか理解できませんでした。
技術や家庭科でも、手先の不器用さから作品を完成させるまでに時間がかかり、友達に助けてもらうことが何度もありました。
周りの子たちが当たり前のように授業を理解し、課題を進めていく中で、私は何度も立ち止まっていました。
「どうして私は、こんなにできないことが多いんだろう」
そんなふうに感じることも少なくありませんでした。
けれど、苦手な科目ばかりだった私にも、ひとつだけ夢中になれる科目がありました。
それが、社会科です。
私が夢中になれた社会科
社会科の中でも、私は歴史が特に好きでした。
歴史には、昔の人々の暮らしや文化、その時代に起きた出来事など、さまざまな物語があります。
ただ人物の名前や年号を覚えるだけではなく、
「この人は、どうしてこんな行動をしたのだろう」
「この出来事があったから、その後の時代はこう変わったんだ」
と考えながら学べるところに、おもしろさを感じていました。
数学の公式や英語の文法は、説明を聞いても頭の中でうまく結びつかないことがありました。
一方で歴史は、一つひとつの出来事を物語として知ることで、自然と頭の中に残りました。
苦手な科目が多かった私にとって、社会科は「分かることが楽しい」と感じられる大切な科目だったのです。
少女マンガから出会った平安時代
歴史の中で、私が特に好きだったのは平安時代です。
もともと少女マンガが好きだった私は、その延長で『あさきゆめみし』を読み始めました。
『あさきゆめみし』は、『源氏物語』を題材にしたマンガです。
作品を読み進めるうちに、私は平安時代の世界にどんどん引き込まれていきました。
登場人物たちが身にまとう華やかな十二単。
季節や身分によって変わる装い。
直接顔を合わせることが少ない中で、和歌に気持ちを込めて伝える人々。
現代とはまったく違う暮らしや人間関係が、とても新鮮に感じられました。
それまでの私にとって、平安時代は教科書の中にある遠い昔の時代でした。
けれどマンガを読んだことで、そこに登場する人たちが、急に身近な存在のように感じられるようになりました。
「平安時代のことを、もっと知りたい」
「十二単には、どんな意味があるんだろう」
「『源氏物語』には、どんな人物が登場するんだろう」
マンガをきっかけに、興味はどんどん広がっていきました。
勉強よりもマンガを読んでいた
『あさきゆめみし』に夢中になった私は、勉強そっちのけで読んでしまうこともありました。
ほかの科目の勉強をしなければいけないと分かっていても、気がつくとマンガを開いていました。
一度読み始めると物語の続きが気になり、途中でやめることができません。
今振り返ると、好きなことへの集中力はとても強かったのだと思います。
興味を持てないことは、説明を聞いてもなかなか頭に入りませんでした。
それなのに、好きなマンガの登場人物や物語は、一度読んだだけでも覚えていることがありました。
同じ「覚える」ということでも、興味があるかどうかによって、私の記憶への残り方は大きく違っていたのです。
教科書よりも歴史マンガが分かりやすかった
歴史の教科書には、人物の名前や出来事、年号などがたくさん書かれています。
けれど私は、文字ばかりの説明を読んでも、内容をうまく理解できないことがありました。
そのため、教科書では資料として掲載されている写真を見ることが多かったです。
昔の建物や道具、衣装、絵巻物などの写真を見ると、その時代の様子を少しだけ想像できました。
そんな私にとって、歴史マンガはとても分かりやすい教材でした。
当時は、さまざまな歴史人物の伝記マンガや、時代ごとの出来事を描いたマンガがありました。
私はそれらを読むことで、歴史を覚えていきました。
教科書に人物名だけが書かれていても、どのような人物なのかを想像することは難しいです。
けれどマンガなら、その人物の表情や行動、人との関わりまで描かれています。
「この出来事の前には、こんなことがあった」
「この人の行動によって、次の時代につながっていった」
一つひとつの出来事が物語としてつながることで、歴史全体の流れが見えるようになりました。
エピソードと単語を一緒に覚える
歴史マンガを読む中で、私は自分に合った覚え方を見つけました。
それは、エピソードと単語をセットにして覚えることです。
人物名や出来事の名前だけを何度も暗記しようとしても、私の頭にはなかなか残りません。
しかし、その人物がどのような人生を送り、どのような出来事に関わったのかを知ると、名前も一緒に覚えやすくなりました。
出来事についても同じです。
年号や名称だけを見るより、
「なぜその出来事が起きたのか」
「その後、世の中がどう変わったのか」
という流れを知ることで、記憶に残りやすくなりました。
一つの単語が、マンガの場面や登場人物の表情と結びつく。
するとテストでその単語を見たときに、関連するエピソードも一緒に思い出すことができました。
私は、単語を単独で暗記するよりも、物語の中で覚えるほうが向いていたのです。
「できない」だけではなかった
中学生の頃の私は、できないことばかりに目を向けていました。
英語が分からない。
数学の問題が解けない。
実技の作業が進まない。
周りと同じようにできない場面が続くと、自分には得意なことが何もないように感じてしまいます。
けれど、社会科だけは違いました。
好きなマンガをきっかけに興味が広がり、自分から知りたいと思うことができました。
時代の流れや人物のエピソードを知ることも、楽しいと感じられました。
苦手な方法では覚えられなくても、自分に合う方法に変えることで理解できることもある。
社会科を通して、私はそのことを少しずつ知っていきました。
当時はまだ、自分の学び方の特徴を言葉にすることはできませんでした。
それでも、歴史を楽しみながら覚えられた経験は、
「私にも、好きになれる科目がある」
「私にも、覚えられる方法がある」
と思わせてくれました。
苦手なことが多かった中学生時代に、社会科は私が自信を失わずにいられる場所のひとつだったのだと思います。
読者へのメッセージ
学校の勉強が苦手だと、「自分には何もできない」と感じてしまうことがあるかもしれません。
けれど、すべての科目が同じ方法で理解できるとは限りません。
文章だけでは分かりにくくても、マンガや写真、映像なら理解できることがあります。単語だけでは覚えられなくても、物語やエピソードと結びつけることで記憶に残ることもあります。
大切なのは、一般的な勉強方法に自分を無理やり合わせることではなく、自分が「分かりやすい」「楽しい」と感じられる入り口を見つけることだと思います。
苦手なことが多くても、好きなことや得意なことまで消えてしまうわけではありません。
夢中になれるものの中に、自分らしい学び方や、まだ気づいていない強みが隠れていることもあります。
周りとは違う方法だったとしても、自分に合った方法で少しずつ学んでいけば大丈夫です。
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