小学校を卒業し、私は中学生になりました。
新しい制服を着て、これまでとは違う校舎に通う生活。
小学生の頃よりも少しだけ大人に近づいたような気がして、楽しみな気持ちがなかったわけではありません。
けれど、新しい生活が始まることへの不安もありました。
仲のよかった子たちとは、クラスがバラバラに
中学生になり、最初に感じた大きな変化はクラス替えでした。
小学校で仲のよかった子たちとは、クラスがバラバラになってしまったのです。
中学校には小学校から一緒に進学した子もいましたが、教室に入ると、それまでとは違う人間関係が始まっていました。
仲のよかった子が同じ教室にいない。
それだけでも、私にとっては心細いことでした。
周りを見ながら、誰と話せばいいのか、どのように過ごせばいいのかを考えなければなりません。
小学校を卒業したからといって、急に人との関わり方が上手になるわけではありません。
新しい環境に慣れるだけでも時間が必要でした。
それでも、少しずつ中学校での生活は進んでいきました。
しかし、私が中学校でつまずいたのは、人間関係だけではありませんでした。
小学校の頃から何度も苦戦してきた勉強が、中学校でも私の前に立ちはだかったのです。
中学校でつまずいた英語の授業
中学生になると、本格的に英語の授業が始まりました。
最初はアルファベットや簡単な単語など、基本的な内容から学んでいきます。
けれど、授業が進むにつれて、私は英語を理解できなくなっていきました。
特に混乱したのが、英語と日本語では文章を組み立てる順番が違うことでした。
日本語と同じ感覚で文章を読もうとしても、意味がうまく頭に入ってきません。
単語を一つずつ覚えても、それが文章になると、どのようにつながっているのか分からなくなりました。
「どうしてこの順番になるのだろう」
「どこから考えればいいのだろう」
授業を聞いても、私の中では疑問ばかりが増えていきました。
一度分からなくなると、その後の内容も理解できません。
英語は、それまでに習った内容を使いながら、少しずつ新しいことを学んでいく教科です。
最初の段階でつまずいた私は、授業が進むほど置いていかれるようになりました。
リスニングテストでも点数が取れなかった
英語の授業では、聞き取りのテストもありました。
音声を聞き、その内容に合う答えを選ぶ問題です。
周りの子たちは、流れてくる英語を聞きながら、次々と問題に答えていました。
けれど、私は音声を聞くだけで精いっぱいでした。
英語を聞き取ること。
問題文を確認すること。
選択肢を読むこと。
そして答えを記入すること。
これらを短い時間の中で同時に進めなければなりません。
私は、聞き取りながら別の作業をすることが苦手でした。
しかし、当時の私は、そのことに気づいていませんでした。
ただ、
「英語が聞き取れない」
「自分は英語ができない」
そう思っていました。
大人になってから気づいた、最初のテストでのつまずき
中学生だった頃のことを振り返る中で、私は大人になってから、あることに気づきました。
私は中学校で初めて受けた英語のテストで、リスニング問題の解き方自体を理解できていなかったのです。
その問題は、音声を聞いて、答えに当てはまるアルファベットを記入する形式だったのだと思います。
難しい英文を書く問題ではありません。
答えとして必要なのは、選択肢を示すアルファベットだけでした。
けれど当時の私は、何を聞き、何を基準に答えを選び、解答欄に何を書けばいいのかを理解できていませんでした。
英語の知識が足りなかっただけではありません。
そもそも「この問題をどのように解けばいいのか」が分かっていなかったのです。
おそらく周りの子たちは、説明を聞けば自然に問題の意味を理解できていたのでしょう。
先生も、生徒たちが問題の形式を理解している前提でテストを進めていたのかもしれません。
けれど、私はその前提の部分でつまずいていました。
問題の解き方が分からないまま音声が流れ、何をすればいいのか分からないまま時間だけが過ぎていく。
今になって考えると、答えられなかったのも無理はなかったと思います。
「分からない」の正体を説明できなかった
当時の私は、自分が何につまずいているのかを言葉にできませんでした。
「問題の解き方が分かりません」
「聞きながら選択肢を読むことができません」
「何を答えればいいのか理解できていません」
そのように説明できていれば、先生や周囲の人に教えてもらえた可能性があります。
けれど、自分自身が困っている理由を理解していなかったため、助けを求めることもできませんでした。
テストで点数が取れないという結果だけを見て、
「私は英語が苦手なんだ」
「勉強ができないんだ」
と思うようになっていきました。
本当は、説明の受け取り方や問題形式の理解、複数のことを同時に行う難しさなど、いくつもの要因が重なっていたのだと思います。
けれど、中学生だった私には、そこまで分析することはできませんでした。
英語の順位は、下から数えた方が早かった
最初のつまずきを抱えたまま、英語の授業はどんどん先へ進んでいきました。
単語や文法を覚えるだけではなく、文章を読んだり、英文を書いたりする問題も増えていきました。
私は授業の内容を十分に理解できないまま、定期テストや実力テストを受けていました。
当然、思うように点数は取れませんでした。
英語の順位は、上から数えるよりも下から数えた方が早いほどでした。
テストが返却されるたびに、またできなかったという現実を突きつけられます。
頑張って覚えようとしても、文章になると混乱する。
聞き取り問題では、音声についていけない。
問題を解くことに時間がかかり、最後までたどり着けない。
そうした経験が積み重なり、英語に対する苦手意識はますます強くなっていきました。
大人になった今でも、英語は苦手
中学校で英語につまずいてから長い時間がたちましたが、大人になった今でも、私は英語が苦手です。
英語を見ると、中学生の頃に授業についていけなかった記憶や、テストで点数が取れなかった経験を思い出します。
最初のつまずきが、その後の苦手意識につながっているのだと思います。
けれど、大人になった今だから分かることもあります。
当時の私に足りなかったのは、努力だけではありませんでした。
私は「みんなと同じ説明を聞けば、みんなと同じように理解できる」とは限らなかったのです。
問題の意味や解き方を、具体的に一つずつ説明してもらう必要がありました。
そして、音声を聞きながら問題を読むような、複数の作業を同時に進めることにも難しさがありました。
もし当時、そのことを自分や周囲の人が理解していたら、英語との向き合い方は少し違っていたかもしれません。
できなかったことには、理由があった
私は長い間、英語の点数が取れなかったことを、ただ自分の勉強不足だと思っていました。
けれど、大人になって過去を振り返ると、できなかったことの中には、それぞれ理由があったことに気づきます。
説明を聞いただけでは、問題の形式を理解できないこと。
文章の順番が変わると、頭の中が混乱してしまうこと。
聞き取りながら、問題を読み、答えを選ぶことが難しいこと。
当時は分からなかった自分の特性が、英語の授業やテストにも影響していました。
もちろん、理由が分かったからといって、英語が得意になったわけではありません。
今でも苦手なものは苦手です。
それでも、
「努力しなかったからできなかった」
「自分の頭が悪かったから分からなかった」
と、過去の自分を責める必要はなかったのだと思えるようになりました。
あの頃の私は、分からないままでも授業を受け、テストに向き合い続けていました。
何につまずいているのかさえ分からない中で、それでも毎日学校へ通っていたのです。
中学生になった私を待っていたのは、新しい学校生活だけではありませんでした。
小学校とは違う難しさを持つ勉強と、再び向き合う日々でもありました。
そして英語だけではなく、中学校ではほかの教科でも、私の苦手なことが少しずつ見えるようになっていきます。
読者のみなさんへ
授業についていけなかったり、テストで思うような点数が取れなかったりすると、「自分の努力が足りないからだ」と責めてしまうことがあるかもしれません。
けれど、「分からない」の裏側には、問題の意味をつかめていない、説明の受け取り方が合っていない、複数のことを同時に進めるのが難しいなど、自分でも気づいていない理由が隠れていることがあります。
私も大人になってから、英語そのものだけではなく、リスニング問題の解き方を理解できていなかったことに気づきました。
もし今、勉強についていけずに悩んでいる人がいたら、できない自分を責める前に、「どの部分から分からなくなったのだろう」と一つずつ振り返ってみてください。
あなたに努力が足りないのではなく、あなたに合う説明や学び方に、まだ出会えていないだけかもしれません。
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